2011年ヨーロッパ紀行 vol.10 |
ホテルにチェックインしシャワーを浴びてリセットして落ち着きました。
時計は9時を回りバルセロナ最後の夜へ向けて出掛けようとホテルを出て地下鉄でパラレル駅からリセウ駅へ向かいました。
とんだ騒動もありお腹も空いていたのですが、まずはカクテルバーのボアダスに向かいリセウ駅からランブランス通りを北に上がりタリエス通りを曲がり着きました。
今都内のバーテンダーが自分を含めて集まり、今までにないバー業界底上げを狙ったカクテルブックを出版に向け、毎週集まり1つ1つのカクテルに向かい合って突き詰めていますが、つい先日の「カクテルブック制作会」で『Mojito』がようやく完成しました。
自分の今回の旅により制作会のモヒートも中断となっていたので、ボアダスでモヒートを飲んでみたいというのがこの日の一番の楽しみでした。
また食前の味覚が鋭い時間にカクテルを感じてみたく、空腹の状態で向き合いたく思っていました
。
ボアダスは表から見ても始めやっているのかな?と思うよう表の灯りもついてなく心配でしたが、扉を開けるとお客さんでカウンターも後ろの席も埋まっていました。
カウンターの奥の方が空いていてカウンターに座れました。
カウンターには3人のバーテンダーがビシッとバーコートを着て迎えてくれました。
店内を見渡すとモヒートを飲んでいるお客様で一杯です。
オーダーを取りに来てくれたバーテンダーにモヒートをオーダーしました。
逆の影となる手前側カウンターでメイキングをしているので材料や工程を遠目に見ながらしか出来ませんでしたが、なかりラムは入っていました。
飲んでみるとアルコールをしっかり感じ日本で飲んだら強くて重いのですが、その土地ならではの気候と伝統か心地よく喉に落ちていきます。
そこで近くにチーフバーテンダーが来てくれた時、自分の名刺と店の写真を渡して自己紹介しモヒートを飲んでみたかった思いを伝えました。
海外のバーは今までも行きましたが、勉強というよりもその国その国の文化の違いを感じたいのが一番で、日本は日本なりのバーの在り方があるので勉強しに行くような感覚ではなかったのですが、ボアダスは飲みながら見ているととても興味深いメイキングを目にしたりで幾つか飲んでみたいなという思いに駆られました。
また、日本でも初めてのバーに行く時は同業として最初に自分から名刺を出すようにしています。
今では自分の店であるので自分が看板なのは勿論ですが、独立前までお世話になってきたお店の時でも一緒で最初に名刺を出すようにして来ました。
修行時代でもそのお店に在籍していることは同業としてそのお店の看板を背負って他のバーへ伺うことであるので、雇って頂いてる中でそのお店の株を落とすようなことだけは何があってもしてはいけないと思いますので。
カウンターの中にいると扉が開いてお客様がいらしてその方がバーテンダーかというのは見た瞬間ほぼ分かるもので、その中では自分は最初に自己紹介して質問やら聞きたいことを教えてもらったりとあるのが礼儀だと思います。
それが無しに質問やら教えて貰うというのは美しくないなと感じるので、また僕は道徳としても好きではありません。
言わなくても分かるのと、言わないならそれを店を出るまで貫き通すならいいと思いますが…
名乗らず色々質問した中で最後に帰る際に「実は自分もバーで働いてまして」なんてケースを良く見ると、分かられてる中では最初に挨拶してその後色々教えて貰えばいいのにと正直思います。
話を戻しボアダスのチーフバーテンダーと話しながらチーフバーテンダーにもう一杯モヒートを創って頂くことにして、またメイキングの前のカウンターが空いたので席を移らして頂きたいと話すと快く移してくれました。
なるほどと思う工程に頭の中で一杯目に飲んだモヒートでの幾つかの不明点が点と点で繋がり理解出来ました。
食前もあり敏感に感じとることが出来ましたがかなり強いので酔いは回ります。
カウンターにいて気になったことで、お客様の多くがモヒート以外にマンハッタンを飲んでいることでした。
しかもステアで創っていません。
チーフバーテンダーにマンハッタンをオーダーしました。
ボストンシェーカーに入れた調合した液体を氷側のシェーカーにシェリーのベネシアンドールの様に高い位置から液体を落とすエアレーションの工程を4〜5回繰返し、フレッシュチェリーが入ったカクテルグラスに注がれます。
一滴も溢れることなく高い位置からスローイングされ落ちる液体には空気がたっぷりと入り、口をつけるとふんわりとした柔らかさがあり衝撃的な創り方でした。
写真のマンハッタンの空気の入った液面はプチプチっとした音まで聞こえ弾けます。
最後にサイドカーをオーダーし、サイドカーもシェークした液体を別のシェーカーに濾し網でクラックを取り除き移し、一度高い位置から下に受けるシェーカーに落としエアーを入れて最後に自分の目の前に置かれたマラスキーノチェリーが落とされたグラスにそのシェーカーのボディー側から注ぎ、オレンジピールがグラスに落とされます。
マンハッタンもサイドカーも海外で飲んだ中で一番美味しかったし、独自のスタイルと理論を感じることが出来ました。
カクテルグラスにすり切りで注がれ氷の入っていないボティー側に残った分も後から注いでくれるので1杯で2杯分位あるのと、ベースはどれもかなり入っていたのですが口当たりが良くて喉落ちがいいのが驚きでした。
ただ、席をメイキング前に移していただいて隣の男性がマンハッタンを一杯飲む間にその後の3杯飲んでいましたが(笑)
4杯を頂きお会計をして席を立つと3人のバーテンダーが忙しい中見送ってくださいました。
ほろ酔いでいい気持ちでランブランス通りを南に下り例のレイアール広場の路地裏のレストランへ向かいました。
そしてバーは素晴らしい空間で、バーテンダーは素晴らしい職業だと強く思いました。
スリ事件からあんだけ動揺があったのにこんなに幸せな気分にさせてくれるなんて。
また、ヨーロッパのバーテンダーも日本のバーテンダーも職業へのプライドや誇りは変わらず同じでも、社会では弁護士さん並みの地位を確立していて、見ていてもも堂々と胸を張っていて社会からも認知されている姿を感じ取ることも出来ました。