2013年ポルトガル・フランス旅 後記 vol.19 |
一昨年訪れた際にコニャックを造る過程や畑をじっくり見学させて頂きましたが、その時にはまだ携われていなかったビール造りを先ず見学させて頂くことに。
勿論ビール造りもビオディナミとなる「La goule」。
ギィ・ピナール家で瓶詰やラベル張りまで一貫して造られています。
ビールを保存する際、ビール酵母を育てる為に室温を25度に常に保つ事が大切な点でありました。
国際ビアーコンペティションでも銀賞を取られたラ・グール見学を終えてから、
今回ギィ・ピナール家に訪れる目的でもありましたコニャックを保存する貯蔵庫に向かいました。
2年後の2015年にDORASが開店10周年を迎えられる際にギィ・ピナール・コニャックを記念ボトリングしたい想いから、その樽を決める目的でありました。
貯蔵庫にてローランさんが樽から掬い出してはグラスに注いでくれました。
1番手前の樽はフォル・ブランシュ種の2010年蒸留です。
ギィ・ピナール家しか造ることしか出来ないビオディナミで絶滅品種のフォル・ブランシュを造る背景も一昨年感じてきただけに染み渡ります。
葡萄の密度が高く、凝縮した中で皮が薄く割れやすいフォル・ブランシュは腐りやすいこと、フィロキセラ問題で絶滅し、それから現在にかけてコニャック地方でも1%しか育てられない苦労がありますが、それをビオディナミ農法で造ることは不可能と云われてきたことを可能にしました。
また、土地の良さもそれに反映しています。
ギィ・ピナール家のあるファン・ボア地区はグランド・シャンパーニュの超一等地の畑でも出来なかった造りを可能にしました。
広域な範囲とたるファン・ボア地区の中でもグランド・シャンパーニュ地区から隣接したファン・ボア地区をプルミエ・ファン・ボアとも云いますが、土壌が違う中にもグランド・シャンパーニュ地区が顔負けする造りをそこでギィ・ピナール家も造り上げています。
また、蒸留所に訪れると多くの樽を保持していることでそのインパクトを誇示するような貯蔵庫と対面することはよくあることですが、正直ギィ・ピナール家の貯蔵庫で保持する樽はとても少ないです。
ギィ・ピナール家が3代続いたコニャック造りを、1968年に収穫の葡萄をつまみ食いした子供がお腹を壊したことがきっかけで畑をビオディナミに変えることになりました。
ただ、変えたからと云ってもそれから勿論直ぐに葡萄を植えることは出来ません。
1969年にビオディナミに変わったギィ・ピナール・コニャックがようやく葡萄を植えれたのはその10年後…
その10年の期間、コニャックの収入がない中で畑を創ってきた愛情しかありません。
ビオディナミに変わって最初の蒸留の1979ヴィンテージが貯蔵庫に眠る1番古い樽となるのです。
他の造り手では圧巻の1800年代やら古いヴィンテージをパラディーと呼ばれる貯蔵庫で見ることもよくありますが、それよりもそこに至る過程こそ僕は大切だと考えます。
家族経営で目の見切れる範囲だけしか手をつけず、毎年の生産量が少ない中にもその想いがより凝縮して入り込みます。
自分の店のスタイルとも同じ点でもありました。
次々にテイスティングしながら、グラスに残るコニャックはその樽の上にかけるローランさん。
その樽に染み込ませてあげるという利に叶った戻し方でした。
そして、幾つものテイスティングから舌も麻痺してくるはずなのですが、その中でもゾクゾクっと心が震えた樽に出逢いました!
その樽を記念ボトリングすることに決め、ボトリングぎりぎりまで熟成して頂き、それまで樽を確保して貰えることになりました。
“愛”
その一言に尽きる愛情と想いを味わいと共にじわじわと感じ、ふと目頭が熱くなって暫く佇んでいた自分がいました。
貯蔵庫を出てパーティー会場へ向かう中、感動の長い余韻を楽しんでいました。
この味わいは他にはない・・・