キュンメルを使ったカクテル紹介と手法の公開 |

キュンメル・リキュールはキャラウェイをベースにアニスやクミン、レモンピールで香り付けした甘い薬草系リキュールです。
種類が少なく流通度も低い中、こちらのボトルは流通から瓶内変化を経て、トゲの無いトロみのあるねっとりとしたオールド・リキュールとなりました。
ストレートで舐めるよう愉しめますが、今日はそんなキュンメル・リキュールを使ったカクテルをご紹介致します。
先ずはスタンダードカクテルとして素材3つを使う黄金比のカクテルから。
【ベースの酒×コアントロー×レモンジュース】の黄金比は廃れることのないベストセラー・カクテルとして伝統がありますが、ベースをジンとした「ホワイトレディー」からコアントローをキュンメルに変えると「シルバー・ブリット」となります。
Silver Bullet

“銀の弾丸”の意として、また魔除けや厄払い酒としての「シルバー・ブリット」は優雅な香りと甘みがジンに乗り、レモンジュースでキリッと締まるいいカクテルだなと思います。
コアントローを使う黄金比のカクテルにも言えますが、この黄金比を引き立てる手法(サイドカーでは大手メーカーコニャックでなくプロプリエテールコニャックを使う場合は別)を公開します。
まず別グラスにジンとキュンメルをプレミックスし、そこでしっかりと混ぜ合わせることにより、ジンにリキュールで“糖コーティング”します。
しっかりと糖コーティングされた中にレモンジュースを投入すると、レモンの量でブレることがなくなり、時間を置いても綺麗なキュンメル(コアントロー)味を引っ張り出す手法です。
糖コーティングされたしっかりとしたベースに対し、レモンは“縦切り・V字カット・縦搾り”で厚みを出すジュースを抽出し、爽やかさに厚みを加え、搾って1~2日寝かすとより甘みが出てくる搾り方で、グレープフルーツの際にも同様に使えます。
シェーカーに材料を先入れ・氷を先に材料を後入れでも大きな違いが出ますが、シルバー・ブリットでは先に氷を入れたシェーカーにプレミックスした材料を氷にコーティングし上からかけるように入れます。
これが時間を経過しても綺麗なキュンメルの味わいを引っ張り出してくれました(コアントローでも一緒)。
手法により変わる味わいをシルバー・ブリットでは“糖コーティング”を利用し、キュンメルを上手く引き立てることが出来ました。
もう1つキュンメルを使うカクテルで、コニャックベースとなる「ケル・ヴィー」をご紹介致します。
Quell Vie

“酒を飲んで人生を楽しむ”の意を持つケル・ヴィー。
ベースのブランデーとキュンメル・リキュールをステアというシンプルなカクテルです。
また、ベースにコニャックを選ぶ場合、特にノンシュガー・ノンキャラメルのプロプリエテール・コニャックでは氷との相性の悪さから手法を選ぶ必要があり難しいカクテルです。
ケル・ヴィーはステアの手法で創りますが、実験としてコニャックだけをシェークしてみると出てくる苦味をどのように対処するか?
またステアにしても氷の溶けによりコニャックの味わいをどの様に保つ手法を選ぶか?
現行のコニャックを使う中で、今回はケル・ヴィーで使うステアの手法を公開します。
ミキシンググラスに入れる氷の数はそれぞれのカクテルで変えていますが、ケル・ヴィーでは3つ(下に大1つ、上に2つ)を組みます。
氷の水洗いは味わいを落とす為せず、霜の張った氷を高速ステアし、氷の水分を完全に飛ばします。
キュンメル・リキュールを氷に当てないように注ぎ、そこからキュンメルだけを30回位高速ステアで冷やし、個体として凝固させます。
そこにコニャックを同じく氷に当てないように注ぎます。
そこから2秒に1回位のゆっくり低速ステアへ。
混ざりが悪いゆっくりステア20回位の間にステアするバースプーンで氷を上げる手法を約3回入れ、混ぜ過ぎない中に液体を上げて“切る”というイメージです。
この手法は氷を入れたままのロックスタイルで提供する「フレンチコネクション」でも適用。
特にロックスタイルであると氷の溶けで味わいが保てない分、明確に差が出てきます。
比重の重いリキュールを高速ステアで凝固させ、冷えた個体に常温のコニャックをゆっくりステアし、また混ぜ過ぎない中で切るステアでは、氷により対流を生ませる意味で3つの氷が必要な訳でありました。
但し、「マティーニ」や「マンハッタン」等他のステアカクテルでは使用する氷は1つ、2つと変わり、氷の洗いやリンスもまたそれぞれとなります。
シンプルなカクテルほど手法により明確に差が出るので面白く、何が正解という答えがないのがカクテルであり、今後も日々手法と技術の追求を続けていきたいと思います。
また、先日作った自家製オレンジピール入りシャルトリューズ羊羹はケル・ヴィーの味わいを引き立ててくれます。

✴︎GWは例年通り通常営業となります。宜しくお願い致します。